手の平サイズの音声翻訳機が注目を集めています。その中で私が最初に「ili」の記事を書いたのが2016年3月。2年以上の実証実験を経て製品化された「ili」には「日本の物作り文化」を感じますが?
音声翻訳機の現状
開発中の「IU」も含めると主な製品は5機種です。
GOTCHA!から抜粋を引用します。
https://gotcha.alc.co.jp/entry/20180206-translation-device
Langie
ランジー目的:旅行・観光、ビジネス、語学学習
長文翻訳:可能
価格:32,184円
対応言語数:オンライン52言語、オフライン12言語?
翻訳方向:双方向
重さ:125グラム
ネット接続:オンライン、オフラインEasytalk
イージートーク目的:旅行・観光、ビジネス、語学学習
長文翻訳:可能
価格:29,800円
対応言語数:35言語
翻訳方向:双方向
重さ:99.8グラム
ネット接続:オンラインPOCKETALK
ポケトーク目的:旅行・観光、ビジネス、語学学習
長文翻訳:可能
価格:24,800円~
対応言語数:63言語
翻訳方向:双方向
重さ:90グラム
ネット接続:オンラインili
イリー目的:旅行・観光
長文翻訳:不向き
価格:19,800円
対応言語数:3言語
翻訳方向:一方向
重さ:42グラム
ネット接続:オフラインIU
アイ・ユー目的:旅行・観光、語学学習
長文翻訳:不向き
価格:16,500円
対応言語数:20言語
翻訳方向:双方向
重さ:34グラム
ネット接続:オンライン
ネット接続が「オンライン」でしか使えないものと、「オフライン」専用と、「オンライン/オフライン」兼用のものがあります。
「ili(イリー)」は「オフライン」専用なので機能は限定的ですが、私にはそこが「日本の物作り文化」の継承者だと思いました。
★楽天市場とYahoo!ショッピングでは「30日レンタルプラン」(2,980円)が選べます。
なぜ「オフライン」にこだわったのか?
最初に「ili」を紹介した記事は以下です。
【ili(イリー)】超小型音声翻訳デバイス、話しかけるだけ?! >>>
2016年3月の記事なのでかなり古いですが、実はこの時点ですでに現在発売されている「片方向翻訳のみ」より高機能な「双方向翻訳」を実現していました。
この時点では「日本語・英語・中国語」に対応した1stバージョンですが、2ndバージョンで「フランス語・タイ語・韓国語」、3rdバージョンで「スペイン語・イタリア語・アラビア語」に対応するとのことになっていました。
私はこういった方向性を「足し算の発想」と呼んでいます。アメリカ人が得意とする発想法です。この分野ではAmazon、Google、Apple、MicrosoftといったITビッグ企業が存在します。
一方で、日本人が得意とするのは「引き算の発想」です。
無駄を徹底的に排除して本質を追求し続けた結果としての究極の簡素さこそが「日本の物作り文化」の象徴と言えます。
「ili」は市場での実証実験を地道に繰り返した結果、敢えて「オフライン」で「片方向」で英語/中国語/韓国語の「3カ国語対応のみ」という究極のシンプルさを選びました。
「オフライン」にこだわると、ハードウェアやソフトウェアの制約が大きいポケット端末では機能を絞り込まなければ製品化が出来ないからですが、それが結果的に成功を呼びました。
再度、GOTCHA!から抜粋を引用します。
iliは日本語から英語、日本語から中国語のように1方向しか翻訳することができず、自分の使っているiliを相手に渡して、英語から日本語に翻訳するということはできません。
開発時には双方向翻訳機能を付けて、海外で実証実験を行ったそうですが、実際には「相手が使い方が分からない」「相手が使うのを嫌がる」「知らない相手にiliを渡すのが不安」ということが起こり、旅行先でiliを使う回数が少なかったそうです。
そこで、「自分の要望を端的に伝える」という用途にしぼったところ、iliを使う回数が劇的に増えたんだそうです。確かにカフェやレストランで注文するときや、買い物であれば一方向の翻訳で十分ことが足りそうですね。
日本国内で使用するのであれば、WiFi環境やスマホのテザリングなどでネットに接続してオンラインで使うことはそれほど障害にはならないと思います。
しかし、アメリカの大都市にしか海外に行った事がない私の思い込みかもしれないのですが、単純な疑問があります。
それは、韓国や中国や台湾や、英語が通じるアジア各国などに海外旅行をする場合、WiFi環境やテザリングで簡単にネットに繋がるのか?ということです。
もちろん、大都市では、電波の届かない場所は別にして、無線ネット接続のインフラは整っていると思います。
では一歩都市を離れるとどうなのでしょうか?
それを考えると「オフライン」のみで使える「ili」にはどこでも使える安心感を感じます。
なぜITビッグ4は未だこの市場に参入しないのか?
スマートスピーカーやスマートフォンアプリなどで音声認識や自動翻訳などの基本技術はITビッグ4企業は多くの蓄積を持っています。
今や「ヘイ シリー」や「オーケー グーグル」と街中で呟いても誰も奇異な視線を浴びることは無くなりました。音声合成のお姉さんの声も然りです。
私の独断と偏見から言うと、このITビッグ4企業は、「オフライン」の「ili」と、その他の「オンライン + クラウド + AI + ビッグデータ」を使ったモデルのどちらが成功するか高みの見物を決め込んでいると想像します。
なぜなら、「ili」が成功すれば、自分達には不得意な戦法を取らざるを得なくなるからです。
もし「オンライン + クラウド + AI + ビッグデータ」が成功したなら、自分達の土俵で戦えるので、各企業の得意分野でゴッソリと市場を押さえて高い利益率のビジネスが出来ます。
つまり、ITビッグ4企業がこの市場に参入して来た時に、対等に戦えるのは「ili」のみだと私は考えています。
まとめ
トヨタ カローラという車をご存知でしょうか?
1966年から販売が開始され、今でも世界でトップの販売台数を誇る「日本の物作り文化」の象徴的製品です。
日本では受け入れられても、海外で、特にアメリカで受け入れられるとは到底思えませんでした。
その結果として「日米貿易摩擦」という言葉まで生まれることになり、今では世界16か所で生産され、154か国で正規販売されているらしいです。
「日本の物作り文化」を一言で説明できるとは思えませんし、それには日本の1000年の歴史が関係していると思います。
いくらクラウドやAIやビッグデータといった最先端のIT技術を駆使しても、1000年の蓄積された知恵と美学には敵わないのではないでしょうか?
それを一番知っているのは、案外ITビッグ4企業なのかもしれません。
ではでは、きらやん